涙と、残り香を抱きしめて…【完】
酔っているせいなのか…
明日香さんは、私が聞きたい事をなかなか話してくれなかった。
一気飲みした新井君が潰れた事とか、スタッフの男性が全員既婚者だったとか…
私にとってはどうでもいい話しばかりが続く。
「ねぇ、もうその話しはいいから、成宮さんの事を聞かせて?」
痺れを切らしそう言うと、今まで絶え間なく話し続けていた明日香さんの声が途絶えた。
「明日香さん、私に気を使ってくれなくていい…事実だけを聞かせて」
『星良ちゃん…ごめん』
この時点で明日香さんが何を言うか、私には分かっていた。
おそらく、良くない話し
『初めはね、スタッフの人達も言いたがらなかったのよ。
でも、お酒が進むとポロポロと話し出して…
成宮さんが同棲してるって事は、事務所の中でも噂になってたらしいの。
でも、あえてその事に触れない様にしてたみたい』
「どうして?」
『さぁ…それは分からない。
どんなに聞いても教えてくれなかったから…
多分、ショーで結婚式をする成宮さんが他の女と同棲してるなんて公になったらマズいと思ってたんじゃないかな?
でもこれで、成宮さんと安奈さんが同棲してたのは事実だって分かったね』
「そう…だね」
分かっていた。
明日香さんに話しを聞く前から、分かっていたけど…
やっぱり、辛かった。
私と成宮さんの関係は、完全に終わったんだ…
うぅん。違うよね。
もっと前から、私と成宮さんは終わっていたのかもしれない。
何も知らなかったのは私だけ。
ホント、情けないよ…
『星良ちゃん、大丈夫?』
心配そうな明日香さんの声が、余計に私を惨めにさせる。
「平気だよ。こんな結果になる事は初めから分かってたんだもん。
これでスッキリした。
ショーが終わったら、彼にさよなら言うよ」
ワザと明るくそう言うと、明日香さんにお礼を言って携帯を切った。