涙と、残り香を抱きしめて…【完】

翌朝、私は起きるとすぐに実家に電話し、母親に結婚式には来ないで欲しいと伝えた。


が、理由も聞かされず、突然そんな事を言われた母親は再びパニック。電話の向こうで半狂乱。


『星良、どういう事よ!!
急に結婚するとか言って驚かせといて、今度は結婚式には来るななんて…
あなた、親をなんだと思ってるの?』


電話を代わった父親も『ふざせけるな!!』とまたまた大激怒。


『相手の男にも会わせず、結婚式にも来るなだと?お前の頭の中はどうなってるんだ?』


私は親不孝な娘だ…と、つくづく思う。


でも、別れるつもりの人との結婚式に両親を呼ぶ訳にはいかない。


お父さん、お母さん
ごめんなさい。
本当に、本当に、ごめんなさい…


出社しても、ため息ばかりでなかなか仕事が進まなかった。そんな私に明日香さんが何度も笑い掛けてくれたが、愛想笑い一つ出来ない。


「島津課長、このスケジュール作成が終わったら、この事業部の仕事もほぼ終わり。ほら、頑張って!!」

「え、えぇ…。それより、新井君はどうしたの?
もしかして、昨日のスタッフとの飲み会のせいで二日酔いとか?」

「あぁ、新井君は生花の卸問屋に行ってるわ。
なんでも朝早くにマダム凛子から携帯に電話があって、仕入れて欲しい花があるって言われたそうよ」

「マダム凛子から直接、新井君に?」


ちょっと、ビックリだな…
なんで新井君なんだろう。


「そんな事より、気持ちの整理は出来た?」


眉を下げ、心配そうに明日香さんが首を傾げた。


「…まぁね、予想通りの結果だったし、今更、驚かないよ…
成宮さんの事は忘れる」

「そっか…でもさ、星良ちゃんの本命は専務だもんね。
これで良かったのよ」

「う、うん…」


確かにそうだけど、なぜかスッキリしない。


どうして成宮さんは、安奈さんの存在を私に言わないんだろう…
彼もショーが終わるまでは問題を大きくしたくないって思っているのかな?



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