涙と、残り香を抱きしめて…【完】
なんとか午前中にスケジュール作成を終え、後はこれをマダム凛子に届ければ、ブライダル事業部としての仕事は終了だ。
「新井君、遅いね…」
時計を見ながら呟くと明日香さんも心配顔で…
「それがさぁ、さっき星良ちゃんがトイレに行ってる時に新井君から電話があったんだけど、指示された生花がなかなか見つからないそうなのよ。
ショーの前日までに調達出来なかったらどうしょう…って、半泣きだったわ」
「わぁ…それは大変だ…」
なんて言いながら私も明日香さんも、頼まれたのが自分じゃなくて良かったね。と胸を撫で下ろす。
薄情な上司だ。
「早いとこスケジュール表を届けてスッキリしたら?
私は新井君から連絡あるかもしれないから社に残るわ。
ウザい子だけど、この事業部のたった一人の部下だからね」
なんだかんだ言って、新井君の事が心配なんだよね。
明日香さんのそんな優しくて面倒見のいいとこ、好きだな…
「そうだね。じゃあ、行ってくる」
オフィスを出て、社用車の配車状況を確認し地下駐車場へと向う。
そしてエンジンを掛ける前に留守電にしてあった携帯を確認すると…
「げっ!!23件?」
全てが両親からのものだった。
「やっばりな…」
結婚式の件で納得していない両親から電話があるだろうと予想していたから、留守電にしてたんだけど…
参ったなぁ~…
大きなため息を付き、メッセージを聞く事なく携帯を助手席に放り投げエンジンを掛けた。
結婚相手が他の女性と同棲してたから別れる事にしたけど、結婚式は挙げる。なんて言っても納得してくれないだろうなぁ…
今は余計な事は言わず沈黙を守るのが最善の策かも…
そう思いながらアクセルを踏み込み地上へと車を走らせる。
降りしきる雨の中、渋滞にイライラしながらようやく式場の駐車場に到着し、車から降りた時だった。一台の大型トレーラーが社用車の横に停車した。
そして、そのトレーラーから降りてきたのは…
「あっ…工藤さん?」