涙と、残り香を抱きしめて…【完】

「アレはね…」

「はい」


何気にドキドキ…


「ふふふ…。悪いけど、それは言えないわ」

「えぇーっ!!そんなぁ~…」


もしかして、私が成宮さん事をはぐらかしたから仕返しされてるの?
なんて勘ぐっていると「そのうち分かるから、楽しみにしてなさい」と工藤さんがニッコリ笑う。


「それより、島津さんはどうしてここに?」

「あ、そうでした…。
スタッフ用のショーのスケジュール表が出来あがったのでお持ちしました」


そう言ってスケジュール表が入った紙袋を工藤さんに見せると、今からマダム凛子に会うから預かると言ってくれた。


正直なところ、工藤さんにそう言ってもらえて内心ホッとしていたんだ。
ホールに行けば成宮さんに会うかもしれないと思っていたから…
ショーまでは、なるべく関わりたくない。


「ところで…桐子先生には会った?」

「あっ…」


ここ数日、色んな事があり過ぎて桐子先生のお見舞いに行けずにいたんだ…


「もう!!どうして行ってあげないの?
島津さんの事、心配してたわよ」

「…桐子先生が、私の事を…?」

「そうよ。ショーの前に一度くらい顔出してあけなさい」

「はい…」

「じゃあ、マダム凛子が待ってるから、私は行くわね」


スケジュール表の入った紙袋を胸に抱え駆けて行く工藤さんに頭を下げながら、私は反省しきり。


桐子先生に不義理しちゃったな…
そうだ。仕事も一段落した事だし、今から桐子先生のお見舞いに行こう。


という事で、私は桐子先生が入院している中央病院へと急ぐ。


病院横の花屋さんで眼に付いたピンク系の可愛いフラワーアレンジメントを買い桐子先生の名前が書かれた病室のドアをノックする。


「失礼します…」

「まぁ!!島津さんじゃない!!来てくれたの?」


予想に反して桐子先生は元気そうで、ベットを起こし雑誌を読んでいた。
でも、頭の包帯が痛々しい…

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