ただひとつ。Side Story
加藤はそう吐き捨てて…


俺に背け歩き出した。



「…待てよ。」




その声は…


喧騒に掻き消されていく。



「………待てって!」



俺は加藤に駆け寄ると…



思わず、その腕を掴んだ。



「…バカっ。ソースついたじゃん!」


「あ…。」



さっき手についたタコ焼きのソースを…


見事に浴衣の袖につけてしまった。



「…ごめん!」


咄嗟だったとはいえ、どれだけ慌てていたのかが自分でも分かった。



…最悪だ。



俺にはもう平謝りするしか術はなく…


どんなに納得いかなくても、そうせざるを得ない状況に立たされた。




「…ごめん。俺が悪かった。」


「…何が『ごめん』なの?」


「だってソース…。」


「そんなのどうだっていい。」


「……。とにかく、ごめん。」


「………。」


「せっかく楽しかったんだ。もう一度、デートし直そう。」





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