Special Edition


優しく微笑む陶匠・藤雪氏。

雲の上の存在の彼が、

『俺ら夫婦』に逢いに来たと言うではないか。


今のは幻聴だろうか?



茶道家にとって、陶芸家は切っても切れぬ縁で結ばれている。

実際、香心流でも古くからご贔屓にしている陶芸家がおり、

毎年初釜の際のお土産には、その窯元で焼いた陶器を配るほど

茶道の世界にも深く根づいている。



まさかまさか、そんな凄い人物と

こんな風に会話している事に俺は驚きを隠せなかった。


目の前の彼が凄い人物だと知らないゆのは

普段と変わらぬ天真爛漫な笑顔で2人を見つめているが、

そもそも視線を合わす事すら躊躇う程の人物なだけに……。


俺はあまりの出来事に手の震えが止まらなかった。


そんな俺の手に優しく重ねられた妻の手。

小さな手で必死に包み込もうとしている。


そんな俺らを柔和な表情で見つめている藤雪氏。

徐に隣りの奥さんに視線を送り、

そして、奥さんの手に重ねられた手を俺らに見せた。


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