Special Edition


心配は要らないと言われても、ゆのは学生だ。

身なりは大人であっても、心はまだ幼さ過ぎる。

俺はこの公の場に連れて来た事を後悔し始めていた。


「只今より、桐島蘭清による華麗なる生け姿をご覧下さい」


アナウンスにより一斉に視線がステージ上に注がれる。


ゆのは藤色の和服姿。

家元の妻という証の翡翠の帯留めをし、

気丈にも凛と背筋を伸ばして微笑んでいる。


スタッフが用意した小さなスツールに腰掛けた。


そんなゆのの周りを行ったり来たりしながらイメージを掻き立てる桐島氏。

1分程、ゆのを凝視していた彼は真剣な顏で生け始めた。


ゆのの隣りには御影氏の恋人と思われる人物。


少し前にテレビで話題になった人に違い無い。

メディアではスレンダー美女と取り上げていたが、

その通りの背のスラリとした美人だ。

まぁ、ゆのには劣るが……。


ゆのには愛らしさと上品さがプラスされている。

それに比べ、御影氏の恋人の女性は、

華やかさには欠けるものの、芯が強そうで澄んだ瞳をしている。


きっとゆの同様、聡明で純粋な心の持ち主なのだろうな。


そんな事を考えながら見届けていると、

ゆのは隣りの女性と何やら話をしている様子。



恐らく、目の前での生ける姿に興奮しているのだろう。


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