もっと美味しい時間
「心配でしょうがないんだろ。今更隠れても無駄だし、お前が悪い訳じゃないんだから堂々としとけ」
それはそうなんだけど、そんな簡単にはいかないよ……。
京介が慶太郎さんと対峙するように立つと、それに隠れるように身を小さくした。
「遅かったな」
「あぁ、晩飯食ってきた」
「そうか。なぁ百花。本当に京介のところに泊まるのか?」
百花と呼ばれて、身体がビクッと強張る。大好きな慶太郎さんの声に、そんな反応をしてしまう自分がいるなんて……。
京介の背中から少しだけ顔を出すと、明らかに落ち込んでいる慶太郎さんの顔が見えた。かなり辛そう……。
まぁ、ここで普段通りの態度で来られても困るんだけど。
「泊まるのか?」の問に、何て答えればいいのか悩んでいると、京介が口を挟んだ。
「お前、百花と二人きりになって、冷静でいられるのか?」
「それは分からん。だからと言って、やっぱり京介のところに泊めるわけにはいかない」
「勝手だな」
どうしよう……。私がはっきりしないせいで、二人の間に不穏な空気が流れ始めちゃったよ。
二人は親友で仕事仲間。こんなことで仲違いさせるわけにはいかない。
ホントはまだ慶太郎さんと二人っきりになるのは、不安と多少の抵抗があるけど、いつかはちゃんと話さなきゃいけないんだよね。
それが今晩になるとは思っても見なかったけど、ここは心を決めたほうが良さそうだ。