もっと美味しい時間  

「京介、もういいよ。慶太郎さんのところに行く。ほらっ、着替えとかもあるしさ」

努めて平静をよそおい笑顔でそう言うと、「分かった」と言って一歩下がった。

「明日は慶太郎も休みだし、時間はたくさんある。納得するまで話し合え。いいな?」

「うん……。京介、今日はありがとう。もしひとりだったら、途方に暮れてたと思う」

「だろうな。じゃ、行くわ」

ふっと笑い私の頭をポンっと撫でると、慶太郎さんには何も言わずエントランスホールへと入っていった。

慶太郎さんと二人っきりになると、何とも重い空気が流れだす。
京介の存在と言うのは今の私たちにとってとても重要だったんだと、改めて知ることになるなんて……。

沈黙の時間が、思ったよりツラい。
ここは私から話す出すべきだろうか……。でも、何て?
やっぱりこの場合、慶太郎さんから話しだすのが筋だよね? 
それを「京介のところに泊めるわけにはいかない」とか言っておいて、だんまりを決め込むなんて。

あぁぁぁぁ~、イライラしてきたっ!!

いつまでもこんな所に二人で突っ立ってるわけにはいかないし、とにかく中に入ろうと慶太郎さんの腕を掴かみ歩き出す。

「へ、部屋に入ろう」

「お、おう……」

それだけ答えると、素直についてくる慶太郎さん。
可哀想なくらい落ち込んでるみたいだけど、ちゃんと反省してる?
ちゃんと納得できる言い訳をしないと、絶対に許してあげないんだからっ。
心の中で慶太郎さんに語りかけると、顔を見ないままエレベーターに乗り込んだ。



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