もっと美味しい時間
「勝手な……そんな勝手なこと言わないでよっ!!」
私がどんな思いでいるかなんて、慶太郎さんには分からないんだっ。
慶太郎さんに何の気持ちがなかったとしても、綾乃さんには意味があるキスだったに違いない。それを慶太郎さんは分かってるのだろうか。
「百花……」
「大好きな大好きな慶太郎さんが、綾乃さんとキスしてるところを見ちゃった私の気持ち、考えたっ?」
泣かないって決めたのに、もう無理っ。
ぽろぽろ溢れてくる涙も拭わないで、訴え続ける。
「綾乃さんのことはどうするの? 私との関係は? 結婚ももう止める? 何もかも無しにしちゃうっ?」
興奮しすぎて呼吸が苦しくなる。その場に座り込むと、手に持っていた袋を慶太郎さんめがけて投げつけた。
「慶太郎なんか、大っ嫌いっ!!」
言いたいことを全部言い、物も投げつけたからか、大きく肩で息をすると少し落ち着きを取り戻す。
「言いたいことは、それだけか?」
そう言いながら、慶太郎さんが一歩ずつ近づいてくる。
「その、余裕ある態度が気に入らないっ」
「あぁ……」
「上からモノを言う態度が気に入らないっ!」
「…………」
「気に入らないところだらけなのに、嫌いになれない自分が一番気に入らないっ!!」
いつまでもこんな調子の自分が一番大っ嫌いっ!
それだけ言って床に突っ伏すと、身体を小さく丸めた。