もっと美味しい時間
「うそ……」
新居に入った私の第一声がこれ。
慶太郎さんから、
『一人で暮らすには広すぎる』
とは聞いていたけど、まさかの3LDK。そして、その広さにびっくりっ!!
「これは何畳あるんですかっ!?」って言うほどのリビング・ダイニングに、ウォークインクローゼットの付いた10畳以上あるマスターベッドルーム。それに、7~8畳はあるベッドルームが2つという豪華な作り。
しかも18階の角部屋で、リビングの外側に当たる部分はすべてガラス張りになっている。そこから見える街の夜景の素晴らしいことっ!!
驚きでしばらく声が出なくなり、ただ呆然と立ち尽くしてしまった。
これが勝ち組の部屋なのね……。
な、何となく、住む世界が違いすぎ?
慶太郎さん、すごく偉い人になっちゃったんだ。
私なんかが慶太郎さんの彼女でいいのかなぁ……。
……って、ダメダメっ!!
こんなネガティブなこと考えてたら、慶太郎さんに怒られちゃうよね。
ちょっと落ち込みかけていた気持ちを奮い立たせると、持ってきた荷物を開いた。
慶太郎さん、今晩は遅くなるって言ってたから夕飯の支度はしてこなかったけれど、帰って来たら少しだけ一緒にお酒を飲もうと思って、簡単に作れる“カナッペ”の準備をしてきていた。
荷物の中から保冷バッグを取り出し、キッチンへと向かう。
他の部屋と同様、キッチンも広い。アイランド式のキッチンは、料理好きの人間にはたまらない場所だ。
ウキウキしながら保冷バッグの中のチーズとハムを出すと、冷蔵庫を開けた。
「……あれ?」
慶太郎さんはほとんど自炊しないはず。なのに、この冷蔵庫の中はかなり充実していた。と言うか、普通の家庭の冷蔵庫以上に揃っていると言っても過言じゃない。調味料類はほとんどあるし卵や牛乳もある。誰かにもらったのか、高そうな牛肉まで入ってる。冷凍庫に至っては、ご飯が一人分ずつラップに包んで保存してあるし、お取り寄せしたのか有名店の点心まで入っていた。
う~ん……。こっちに来てから食生活の不摂生さを反省して、少しは自炊するきになったのかなぁ。それとも料理好きの私のために用意しておいてくれたとか?
楽観的に考え、その事をさほど気にすることもなく、チーズとハムを中にしまった。