もっと美味しい時間
これは誰? と思うほど別人の顔をした慶太郎さんに驚きながらも、ちょっと可笑しくなって笑ってしまう。
「今日はイケメンじゃないね」
「普段だってイケメンじゃないさ」
そう思ってるのは慶太郎さんだけで、世の中の女性は慶太郎さんを見ると誰もが振り向いて頬をピンクに染めるんだよ。知ってる?
そんな慶太郎さんが私の恋人なんて……。
ほんと、大変なんだからっ!
心の中で文句を言うと、ぎゅっと頬をつまみ上げた。
「何で俺は、抓られてるんだ?」
「自分のことが分かってないから。私の苦労も考えてっ!!」
こういうのを“とばっちり”と言うのだろうか。
慶太郎さんの気持ちとは関係のないことで、頬を抓られてる姿は滑稽だ。
でもね、いつもの慶太郎さんならこんなことをすれば「いい度胸だな」なんて言って私を弄ぶのに、今日の慶太郎さんは私のするがまま。
夕方の一件もあって、申し訳ない気持ちで反抗しないんだと思うんだけど……。
それはそれで面白くないというか、つまらないというか。
矛盾した考えかもしれないけど、慶太郎さんらしくない。
抓っていた手を緩め、今度は頬を擦る。
「ごめんね。頬、痛かったよね……」
「こんな痛み、お前の胸の痛みに比べたらどってことない」
「やっぱり……」
「殴ったって、いいんだぞ? うん? やっぱりって?」
怪訝な顔を私に見せる。
「慶太郎さんの気持ち、ちゃんと伝わったから。もう大丈夫だから」
「許してくれるってことか?」
「う~ん……そう、かな」
慶太郎さんの顔がパッと明るくなり、目に力が漲った。
いつもの慶太郎さんの目だっ!