もっと美味しい時間
コーヒーカップをテーブルに置くと、慶太郎さんの方を向いた。
「言わなくちゃいけない? 大したことじゃないんだけど……」
「大したことじゃないなら、言えるだろ」
そりゃそうだ。往生際が悪いよね。
誤魔化そうとするのを諦めると、ふ~と息を吐いた。
「京介から聞いたの、二人が出張に行ったって」
「それとお前が大阪に来たのと、何の関係があるんだ?」
「一泊……だったって」
「ああ、そうだけど……。何? お前まさか……」
「一緒の部屋だったのかなぁ~なんて、思っちゃって。あはっ」
こういう時は、笑って誤魔化すに限る!
慶太郎さんから少しづつ距離を取っていると、素早く足を掴まれ引きずり戻されてしまった。
「別に怒ってないから逃げるなって」
いやいや、その顔は間違いなく怒ってるでしょ……。私には分かる。
普段はポーカーフェイスを貫いていて、あまり喜怒哀楽を表さない慶太郎さんも、私の前ではかなり表情が豊かになってきた。
まぁ、怒ってなくても眉間に皺が寄ってることが多いんだけど……。
「で、俺の疑いは晴れたわけ?」
よく考えて見れば、出張と言うことは仕事だ。仕事先で男女が同じ部屋で夜を過ごすなんて、普通ならあり得ない。
慶太郎さんと綾乃さんの過去を知っていたから、あらぬ考えを起こしてしまった。とんだ早とちりだっ。
「うんうん、晴れた晴れたっ」
でも何となく負けたみたいで、投げやりに答えを返す。
慶太郎さんの凛々しい眉が、ピクッと上がる。