もっと美味しい時間
食べる前は、この状況大丈夫? なんて思っていたけれど、恙無く朝食を終えた。
慶太郎さんたちにコーヒーを淹れなおし片付けも済むと、自分の支度にとりかかる。
寝室への移動途中、リビングの二人に目をやれば、小難しい顔をして仕事の話をしていた。何となく声を掛けづらい雰囲気に、そのまま黙って寝室へと移動した。
寝室に入ると服を着替え、化粧を始める。
いつもならシンプルで素顔に近いメイクしかしない私だけど、今日は力を入れよう。
何せ相手は、美貌ではどうやっても敵わない綾乃さんだ。
今更、身長は伸ばせないし、体重は減らせない。
だったら、見栄えくらいは良くしておかないと。
服は多く持ってきていない中から、一番大人っぽく見えるものを選んだ。
メイクは……。
自己流でメイクを覚えた私に、いつも以上のものが出来そうもない。
小さく溜め息をつくと、普段よりは幾分濃いめの化粧をした。
小さな手鏡を見つめる。
「魅力ないよね……」
さっきまで沸き上がっていた闘志が、ヘナヘナと衰退していくのを感じる。
あの自信満々の態度でやって来られたら、私なんてひとたまりもない。
体育座りで足を抱えると、小さく蹲った。
「脱衣場での勢いはどこいった?」
その声に顔を上げると、いつの間に来ていたのか、慶太郎さんが立っている。