もっと美味しい時間  


10時ピッタリ。綾乃さんの訪問を知らせるチャイムが鳴る。
慶太郎さんがインターホンに出ると、「わたし」と声が聞こえ、一瞬にして身体が緊張感に包まれた。
振り向いた慶太郎さんが、無言で『大丈夫か?』と聞いてくる。
それに『うん』と頷くと、玄関のチャイムが鳴った。

京介はソファーに深く腰掛け、自分で淹れなおしたのかコーヒーを飲んでいた。
目が合うと、ニヤッと意味深な笑みを私によこす。

「何?」

「いや、あの綾乃と対決しようって割りには、落ち着いてるなと思ってさ」

「そう見えるだけだよ」

「慶太郎とキスしたからかと思ってた」

慶太郎さんとキス? どうして京介が知ってるの?
もしかして……

「覗いてたの?」

「ドアを開けっ放しにしておくほうが悪い」

「うっ……」

そう言われれば、そうだけど……。
京介をジロッと睨みキッチンに入ると、同時に綾乃さんがリビングへと入ってきた。
今日の綾乃さんも完璧だ。
初めて見るグレーの甘めのワンピースに、仕事の時は付けないだろう可愛いアクセサリーを付けている。

私のワンピースとは大違い__

艶のある黒髪をサラッとなびかせソファーに座ると、京介と一言二言言葉を交わした。



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