もっと美味しい時間
慶太郎さんがキッチンに来ると、運ぼうとしていたお盆を取られてしまった。
「俺が運ぶ」
慶太郎さんも緊張しているのか、さっきまでとは違い神妙な顔つきだ。
リビングの綾乃さんを見れば、いつにも増して飄々としている。
慶太郎さんに伴いリビングに行くと、綾乃さん京介と向かい合うように座った。
シーンと静まり返る室内。
こういう時って、言い出しっぺの私が口火を切るべき?
なんて言ったらいいものか俯いて思案していると、綾乃さんがこの静けさを打ち払った。
「昨日のキス、私は謝るつもり無いから」
おぉ~、いきなりそう来ましたかっ!
怯む私をよそに、続きの言葉を言い放つ。
「私は今でも慶太郎が好き。愛してる。この気持ちは誰にも負けない」
自信満々に言えるなんて……。その気持ちは本当なんだろう。
でもそれは私だって同じだ。
ふう~と大きく息を吐くと、綾乃さんの目を凛と見据えた。
「私だって慶太郎さんが好きです。誰よりも愛してます。どんなことがあったって、彼を手放すつもりはありませんっ。それが綾乃さん、あなたでも他の誰であっても」
息継ぎもせず一気に言ってしまい、呼吸が乱れる。
心配そうに手を差し出す慶太郎さんを制すると、胸に手を当て呼吸を整える。
綾乃さんは、顔色一つ変えないで私を見ていた。
「今はそうかもしれない。でもね、離れて生活しているとお互いの心が離れてしまうのを私は知ってる。私はもう二度と、慶太郎から離れるつもりはないから。近くにいる人間に心が動かされるのは、世の常」
今度は勝ち誇った顔をして、慶太郎さんを熱く見つめた。