もっと美味しい時間
慶太郎さんにピタッとくっつき、腕を絡める。
人前でするには抵抗があったけど、心を決めて背伸びをすると、慶太郎さんの頬にキスをした。
「二人がいるから頬にしたけど、二人っきりになったら……」
今日は私が甘く囁く。
そんな私たちを見て「やってらんない」と呟いた綾乃さんが立ち上がると、手を振ってリビングから出て行った。
京介は我関せずとばかりに、冷めたコーヒーを飲んでいる。
慌ててキッチンに行くと、新しいコーヒーを淹れた。
「京介、今日はごめんね」
「何が?」
「こんな関係ない色恋沙汰に付きあわせちゃって……」
「いや、関係なくもないからな」
「へっ?」
私が何で? と考えていると、京介が慶太郎さんに近づいた。
「俺もお前に一言。もし今後、百花を泣かせるようなことがあれば、俺も遠慮なく奪いに来るから。そのつもりで」
慶太郎さんにそう宣言し高笑いをひとつすると、熱いコーヒーを一気に飲み干し楽しそうにリビングを後にした。
「京介の奴……」
複雑な表情で唇を噛んでいる、慶太郎さんのそばに行く。
「あんまり強く噛むと血が出ちゃう」
唇に手を近づけようとしたら、パシっとその手を奪われる。
アッと思う間もなくクルッと反転させられ壁に押し付けられると、もう片方の手も一緒に頭上で手首を捕らえられた。