もっと美味しい時間
出来上がった鉄板ナポリを食べ始めると、慶太郎さんが話し出した。
「なぁ百花。さっきの話、本気なのか?」
「さっきの話?」
毎週土曜日は鉄板何がしとか、無意識のうちに喋っちゃってたっ!?
いやぁ~、恥ずかしい恥ずかしい……。
照れたようにニヤニヤしていると、テーブルの向こうから手がやってきて私の頭を叩いた。
「お前、違うこと考えてるだろっ。仕事辞めて、こっちに来るって話だよ」
「あぁ、そっち……」
叩かれた頭を左手で擦りながら、ナポリタンを一口食べる。
「仕事続けたい、スキルアップしたいって言ってたじゃないか?」
「うん……」
婚約したと言っても、まだ二人だけの口約束状態。お互いの親にも報告していない。
だから今すぐ仕事を辞めて、大阪に行かなくてもいいと思っていた。
仕事をしながら徐々に話を詰めていき、1年~2年後には……。
なんて、そんな悠長に考えていた。
でも一人になってみて、綾乃さんとのことがあって、ハッキリと自分の気持ちに気づいた。
---私は慶太郎さんのそばにいたい---
「慶太郎さんは、私がこっちに来るの反対?」
「まさかっ。俺は最初からお前とこっちに来たかったんだぞ」
「だったら……」
「仕事、中途半端にならないか?」
「今やりかけの仕事は、責任持って全部終わりまでやる。それが済むまでは辞めないよ。スキルアップに関しては、どこで働いたって私のヤル気さえあれば出来ると思うし」
慶太郎さんはうんうんと頷きながら、真剣に私の話を聞いてくれる。
やっぱりいつでもこうやって、顔を見て話しが出来るっていい。
声だけじゃ伝わらない気持ちも、顔を見ればよく分かる。
現に今、慶太郎さんの声は心配そうなのに、顔を見ればとても嬉しそうだった。