もっと美味しい時間
今日は櫻井京介のこともあって、少し気が立っていたのかもしれない。だから、自分の思っていた通りに事が運ばないだけで、拗ねて怒って……。
結局、慶太郎さんに気を使わせてしまった。
いつまでたっても子供過ぎて、自分で自分に呆れてしまう。
「また一人で、余計なこと考えてる?」
優しく微笑み、顔を覗かれる。
これ以上、慶太郎さんに気を使わせるわけにはいかない。左手に持っていた缶ビールをキッチンに置くと涙を拭い、笑顔を向ける。
「考えてないよ……。ごめんね」
でもその顔がいまいちだったのか、慶太郎さんはやっぱり呆れたように苦笑してから私の肩を抱くと、そのままリビングへと歩き出す。
「なぁ百花。お前は言いたいことがあっても、いつも胸の中にしまい込むよな」
「そ、そんなこと……」
「無いって言えるか? 俺はお前の何?」
ソファーに腰を下ろすと、私を膝の上に乗せた。
「何って……。彼氏?」
「まぁそれも間違いじゃないが、正式な形は取ってないとはいえ、俺はお前の婚約者だ」
“婚約者”という言葉に、頬がポッと赤みを増す。
「う、うん……。でも、だからって、毎日大勢の人の上に立って働いている、慶太郎さんの重荷になっちゃいけないと言うか、なんと言うか……」
今回、大阪駅に着いてからの事だって、仕事中の慶太郎さんに迷惑をかけてしまった。
「俺が、そんな軟で情けない男だと思ってるわけだ」
「そんなこと、一言も言ってないっ!」
「百花がどんなに迷惑をかけようと心配かけようと、俺にとっては何の問題もない。いつでもお前のことを、一番に想ってる」
愛おしそうに私の身体を抱きしめ、髪を撫でる。