もっと美味しい時間  

「そんな風に、私を甘やかさないで……」

「それは難しい願いだな。お前を愛してるから仕方ない」

そう飄々と言ってのけると、抱いている手で身体のラインをなぞり始める。

「け、けいたろう……さん……?」

「俺がどれだけ百花を愛してるか、こっちに来る前、身体に教えておいたはずだけど、まだ足りなかったみたいだな?」

「えっ?」

あれれ!? ちょ、ちょっと待ったっ!!
私、慶太郎さんの“意地悪モードスイッチ”押しちゃったかも……。
これって、非常にマズい展開になりそうな気がするんだけど。
恐る恐る顔を上げ、慶太郎さんの顔を伺うと……。

やっぱり……。

笑顔……には違いないんだけど、明らかに何か企みを含んでいて、この後のことを想像すると怖くなってしまうような笑顔だった。

「明日も昼過ぎまで仕事だから、今晩は抱きしめて寝るだけのつもりだったけど、止めた。朝まで寝かせないから覚悟しとけよっ」

そう言って頬を包み込むと、チュッと甘いキスをひとつ落とす。
膝の上から私を下ろしソファーに座らせると、リビングから出ていってしまった。
その後ろ姿を目で追っていた私は、慶太郎さんが見えなくなると身体の力が抜け、ソファーにドサッと倒れこむ。

ど、どうしよう。

慶太郎さんに抱かれるのは嬉しいけど、まさか朝まで寝かせないなんて……。
明日も仕事だって言ってたし、いくらタフな慶太郎さんでもそこまではしないよね?
軽い冗談ってやつだよ、きっと。
あはっ、あはははははぁ……。
気味悪い笑みを浮かべていると、リビングのドアから慶太郎さんが顔を出した。

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