もっと美味しい時間
「こんなとこでダメでしょっ!」
耳元に囁けば、クルッと顔をこっちに向けて唇にチュッ!!
「っ!?」
声出せないのを分かってて、完全に遊んでるっ!!
慶太郎さんって、こんな人だったっけ?
うちの両親に触発されちゃったとか?
どちらにしても両親も一緒の車の中じゃ、これ以上のことは困るっ!!
繋いでいた手を離すと慶太郎さんから距離を取り、窓の外を見た。
朝出かける時は梅雨曇が広がっていた空も、こちらに着いた頃には雲の切れ間から日差しが降り注ぎ、山の木々を照らしていた。
窓を少し開けると、住んでいる街とは違う匂いがする。
目を瞑りその空気を吸い込むと、気持ちが洗われたような気がした。清々しい気分だ。
実家は駅から車で15分ほど走ったところにあって、古い民家を譲り受け少しリフォームして住んでいた。広い庭には手頃な大きさの池もあり、錦鯉が数匹泳いでいる。
その風景を長い縁側から眺めていると、まるで昭和の時代にタイムスリップしたような気分だった。
って私、平成生まれなんだけど……。
テレビで見る、勝手な昭和のイメージってやつだ。
車が赤信号で停まると、最近できたというコンビニが見えた。ここを右に曲がればすぐ実家だ。
「慶太郎さん、もうすぐ到着だよ」
「そうか。想像してたより田舎だけど、いいところだな」
その言葉を聞いて、慶太郎さんと一緒にここに来れたことを、心から嬉しいと思った。