もっと美味しい時間  

「百花。キスしたい気分なんだけど」

「私も……」

顔を上げ、慶太郎さんを見つめた。魅惑の瞳に捕われる。
ゆっくりと近づいてくる顔に合わせるように、目を伏せていく__

「お取り込み中、ごめんなさいね」

し、しまったっ!  ここ実家だったんだっ!!
それも扉開けっ放しだし……。

飛び跳ねるように慶太郎さんから離れると、何事もなかったかのように荷物を片付け始めた。
一人残された慶太郎さんは、罰が悪そうに頭を掻いて母に頭を下げていた。

「何も恥ずかしがることないじゃないっ。愛し合ってる者同士がキスするのは、当たり前の行為でしょ?」

「お、お母さんっ!  何か用事でもっ?」

「お茶淹れたから、居間に来て」

ウインクを慶太郎さんに送って、さっさと戻っていってしまった。
力が入っていた身体が一気に弛緩して、床にぺたんと座り込む。
何で、自分の実家で緊張しなきゃなんないのっ!
がっくり項垂れていると、慶太郎さんが寄ってくる気配。

「実家にいる間は、キス禁止!!」

顔を上げ両手を伸ばして、慶太郎さんを制止する。
私の動きを面白そうに見ながら、私の手を取った。

「また禁止かよ。好きだなぁ~禁止が」

「誰も好きで禁止してるんじゃなーいっ!!」

ハハハッと笑う顔が、いちいち格好良すぎてムカつくっ!!

でも大好きだからしょうがない……

手を引かれるままに立ち上がるとその手を握りしめ、いい匂いが漂う居間へと向かった。

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