もっと美味しい時間
「どうした?」
「あっ、ううん、なんでもない」
「溜め息ついてたのに?」
「大丈夫、大丈夫。私、お母さん手伝ってくるね」
何か勘ぐっている慶太郎さんを残して、そそくさとキッチンに行く。
母を手伝っていた父に慶太郎さんの相手を任せ、代わりに私が手伝いに入る。
「百花と料理なんて、久しぶりね」
「そう言えばそうだね。私も慶太郎さんに作るようになって、前より腕上げたんだよ」
「そうなんだ。旦那様は家族の為に、一生懸命働いてきてくれるの。だから美味しい料理を作って、旦那様の帰りを待つ。百花、これもあなたの大切な仕事のひとつよ」
「うん」
父と楽しそうに話しをしていている慶太郎さんを見る。そこには、私の大好きな笑顔が広がっていた。
毎日、あんな笑顔でいられる夫婦になりたい。漠然とだけど、そう思った。
いっつもラブラブで、見てるこっちが恥ずかしくなることもしばしばだけど、父と母みたいな夫婦に……。
結局話しに夢中になってしまい、今晩の料理はほとんど母が作ってしまった。
慶太郎さんに田舎の家庭料理をと、野菜の煮物がメインのメニューだ。
それに川魚の塩焼き。今日は鮎だ。それを囲炉裏で焼く。
慶太郎さんは父と日本酒を飲み、早いうちに出来上がっていた。
気分良さそうに過ごしている彼を見てホッとしていると、母が私に耳打ちをした。
「今晩は、早く寝かせてあげなさいね」
「それ、どういう意味?」
「もう百花ったら、分かってるくせに!」
そう言うと、私にキスするような格好を見せた。
それって……。
「おかーさんっ!!」
真っ赤になって怒る私に、ケラケラと面白そうに笑う母。
この人には、一生勝てそうにない。