もっと美味しい時間
お風呂に入り身支度を整えた慶太郎さんが、朝食の用意がされたリビングに来た。
「おはようございます。昨晩はすみませんでした。それに朝風呂まで……」
「慶太郎くん、おはよう。何を言ってるんだい。君はもう我が家の一員だろう。気を使う必要はないんだ」
「はい。ありがとうございます」
まだ言葉遣いが堅いなぁ~なんて父に言われて、頭を掻く慶太郎さん。
小さい頃から思い描いていた光景──
私の旦那様になる人が、父と世間話に花を咲かせたり、お酒を酌み交わしたり……。その横で、母と私がその光景を幸せな気持ちいっぱいで見つめる。
まだ結婚はしていないけど、それがこんなにも早く実現してしまうなんて……。
まさかこれは夢? ちょっと古典的だけど、自分で自分の頬を抓ってみる。
「痛い……よね」
自然と笑いが込み上げてきた。
「楽しそうだな」
父と話を終えた慶太郎さんが、覗き込むように顔を近づけた。
途端に頬が熱くなる。
いつ見ても、やっぱりイケメン。
整った眉に大きな瞳。薄いけどプルンとした唇は少しだけ開いていて、まるで私にキスしてと言っているようだ。
「ここじゃマズいぞ」
耳元でそう囁く顔はニヤリと笑い、私の心を見透かしているようだった。
「な、何言ってるのか分からない」
動揺しながら応えれば、頭をポンポンと撫でられる。
やっぱり慶太郎さんには敵わない。