もっと美味しい時間  

ホームのベンチに座り、電車が来るのを待つ。
しばらく何も言葉を交わさず、そこから見える風景を眺めていた。
慶太郎さんと絡めている手に、力が込められたのを感じる。
黙ったまま彼の顔を見た。しかし私とは目を合わさず、しっかりと前を見据えたままだ。

「百花。俺、お前を絶対幸せにするから。だから、ずっとそばに居てくれ」

「うん……」

そう言ってもらえるのは、とっても嬉しいけど……。でも急にどうしたというのだろう。変な慶太郎さん。

今回うちの親に挨拶をしたことで、慶太郎さんとの結婚も、慶太郎さんとの距離も、グッと縮まった。
後は慶太郎さんのご両親に挨拶に行って、今取り掛かっている仕事が終われば、
晴れて私も大阪府民!!
慶太郎さんと、一緒に暮らせるんだ。
そう思うだけで、ニヤニヤと顔がほころんでしまう。
結婚式の話は、一緒に暮らし始めてからゆっくりと決めていくことになっている。
女の子としては、こんなウエディングドレスが着たい! とか、こんなことしてみたいっ! 的なことがいっぱいあるけど、俺様な慶太郎さんがどこまでそれを許してくれるか……。
なんだかんだで、結構うるさそうな気がするんだよね。
まだ景色を眺めている慶太郎さんの方を向くと、「うん? 何だ?」と言って、やっと私の顔を見てくれた。

「景色ばっかり見てるから……」

ちょっと拗ねた顔をしてみせる。

「バカだなぁ。景色にヤキモチ妬くな。こんな風景、普段の生活じゃ見れないから、目に焼き付けてるんだよ」

両親が住む街を気に入ってくれてみたいで、良かった。
きっと、お父さんとお母さんも喜ぶよ、慶太郎さん……。

───ありがとう───

心の中で感謝し、慶太郎さんに身体を寄せた。

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