もっと美味しい時間
駐車場まで来ると、やっと落ち着いて息ができるようになった。
掴んでいた手を離し、慶太郎さんが運んでくれたスーツケースを車に積む。
「慶太郎さん、今の騒動で無茶苦茶お腹が減った。死にそう……」
お腹を抱えて、空腹をアピールする。
「分かってるよ。今日は春さんの店に予約入れてある」
「わぁ嬉しい。あそこのお好み焼き絶品だし、春さんに会いたかったんだぁ」
前回は、慶太郎さんと綾乃さんのキス事件の後に京介に連れられて行った。楽しい時間を過ごしたけれど、情緒不安定で泣いたりボーっとしたり……。
でも春さんは明るい笑顔で、私のことも娘だと言ってくれた。
だからちゃんと慶太郎さんと一緒に行って、こっちに来ることと結婚に向かって進んでいることを報告したかった。
京介が運転席、慶太郎さんは助手席。
私は一人寂しく、後部座席に座った。
やっぱり慶太郎さんは支社長だから、いろいろ仕事のことで問題を抱えているのだろう。
京介と全く分からないことを、小難しい顔をして話している。
私がそこに入る余地はない。
しょうがないこととはいえ、ちょっと寂しい……。
とは言え、こんなことで凹んでいても、何かが変わるわけでもない。
これからは慶太郎さんの癒しの場所を作れるように、頑張っていかないと。
両手に握りこぶしを作ると、そこにグッと力を込めた。
「何してるんだ?」
「うぇっ!?」
おもいっきり変な声が出てしまった。
は、恥ずかしい……。
京介は笑いを堪えているのか、肩が小刻みに揺れていた。