もっと美味しい時間  

「京介、笑いすぎっ!  ちょっと気合入れてただけだから、気にしないで」

アハハと照れ笑いしながら、こっちを向いてる慶太郎さんに手を振ると、「ふ~ん……」と納得してないような顔をして前に向き直った。

言い訳がちょっとわざとらしかったかなぁ……。
慶太郎さんのことだ。私が気にしないでと言ったって、気にしてると思う。
お母さんにも慶太郎さんに迷惑かけないよう言われてるし、気をつけないと。

しばらく何も考えないで目を瞑っていると、車が停まったのに気づく。ゆっくり目を開けると、二人が後ろを向いていて驚いた。

「な、なにっ?」

「いや、寝てるのかと思って。疲れたか?」

「ううん、大丈夫。春さんのお店に着いたの?」

「ちょっと会社に寄った。忘れもんあってな。ちょっとここで待ってろ」

そう言うと、京介と一緒に車から降りた。
窓から外を覗くと、ここはどうやら大阪支社の正面玄関みたいだった。
時間的にちょうど退社の人が多く、人が通る度にこっちを見ていく。
何か嫌だなぁと顔が見られないよう俯くと、コツコツを誰かが窓を叩く音がした。その音にドキッとしながらも、ゆっくり顔を上げた。

「あっ、綾乃さんっ!?」

大慌てで車から降りる。

「あなたここで何やってるのよ?」

「いえ、あの……」

相変わらず上からモノを言うというか、威圧的な態度にたじろいでしまう。

「ほんとにトロい子ね。知ってるからいいわよ」

知ってんのかっ!? なら聞かないでよねっ!!
と、口に出して言えない私が情けない。


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