もっと美味しい時間  

「赤くなんて……」

「してるだろっ。お前がそういう顔するから、京介にちょっかい出されるんだよ」

「自分だって、あの人たちに言い寄られてたくせにっ」

私たちの小さい争いに、ぽかんと呆れ顔のお姉さん方。
普段のイメージとかなり違う慶太郎さんを見て、呆気に取られるみたいだ。

「まぁまぁ、こんなとこで喧嘩するな」

まるで他人ごとのように、京介が止めに入る。

「お前が悪いんだろっ!」
「京介が悪いんでしょ!」

慶太郎さんと私が同時に叫んだのを見て、大笑いする京介。

「っとに息ぴったりだな。さっ、そろそろ行かないと、春さん首長くして待ってるぞ」

そう言うと京介はお姉さん方に手を振って、先に車に乗り込んでしまった。
何となくバツが悪く居心地よくない気分でいると、慶太郎さんが手を握ってきた。

「慶太郎さん、ここじゃ……」

握られた手を振り払おうとして、拒否される。それどころかその手をグッと引っ張ると、大勢の前で抱きしめられた。
お姉さん方の「キャ~」と言う、驚きの声が耳に届く。
車の中では京介が、ハンドルをバシバシ叩きながら笑っていた。
恥ずかしすぎる~。
慶太郎さんの腕の中から逃れようと、身体を動かす。

「動くなよ。動くとここでキスするぞ」

「意味分かんないよ……」

しばらく抱かれたままでいると満足したのか、身体を離す。
スーツを整え、いつものクールで出来る男の顔に戻すと、お姉さん方に手を上げた。

「じゃあ、お疲れっ!」

今のは何だったのと言わんばかりに立ち尽くしているお姉さん方の顔は……しばらく忘れられそうにない。
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