もっと美味しい時間  

口から出た言葉は、慶太郎さんと京介を驚かせた。

「お前で役に立つのか?」

慶太郎さんが心配そうな顔をする。

「おいおい、春さんの足手まといになるなよ」

京介は、面白そうに笑っていた。

「本当にいいの? 百花ちゃんが手伝ってくれれば助かっちゃうんだけど」

「はいっ」

バッグからピンク色の髪ゴムを取り出すと、胸のあたりまで伸びた髪をひとつに纏める。
飲食店で働くのは、高校生の時以来だ。すぐには勘を取り戻せそうもないけど、自分から言い出したからには頑張らなくちゃ。
春さんが持ってきてくれた花がらのエプロンをつけると、さっそうと部屋を飛び出した。


それから二時間後───

勘を取り戻すどろか、慣れない仕事に悪戦苦闘。やっとお客さんの数も減ってきて、お役御免で戻ってきた。

「慶太郎さん、お水……」

這うように部屋に入って行くと、慶太郎さんにもたれかかった。
冷たい水を一気に飲み干す。
カラッカラに乾いていた身体に、命の水が染み渡った。

「ふぇ~、生き返る~」

「大袈裟だなぁ。お疲れさん」

「慶太郎さんの手、気持ちいい……」

疲れている身体を労るように擦ってくれる慶太郎さんに、ここがどこかも忘れて甘えてしまう。

「百花ちゃん、お疲れ様」

春さんの声に我に返り、ここがどこかを思い出す。

「百花ちゃんはこの部屋にいると、すぐに抱きしめられちゃうのね。うふふ」

慶太郎さんの眉が、ヒクっと動く。
春さん……。
今の一言、ヤバいです~。




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