もっと美味しい時間
「もう観念しろよ。それに緊張するほどの親じゃないぞ。どこにでもいるような、おっさんとおばさんだ」
「そんなこと言われても……」
バサッと顔を上げ、涙目で慶太郎さんを見つめる。
「私の髪型、変じゃない? 今日の服、似合ってる?」
「髪型は決まってるし、洋服もバッチリだっ!」
「う~ん、慶太郎さんの言うことは、あてにならないからなぁ」
「自分で聞いといて、なんだよそれっ!」
はぁ……。よく緊張して、口から胃が出てきちゃいそうだったとか言うけど、今まさにそんな感じ。
緊張しすぎて、胃がムカムカしてきたよ。
「慶太郎さん、次のサービスエリアで休憩」
「了解」
苦笑しながらそう返事をすると、慶太郎さんの左手が伸びてきて、私の身体をゆっくりと倒した。頭が、慶太郎さんの太腿に乗せられる。
「着くまで、ここで休んどけ」
優しくそう言うと、背中をポンポンと撫で始めた。
「ち、違う意味で緊張するんだけど……」
「何? 俺に密着して緊張するなんて、変なこと考えてるのか?」
背中を撫でている手が、悩めかしく動く。その動きを身体が敏感に感じてしまい、身動きが出来なくなってしまった。
でも何だか、それはそれで気持ち良かったりする。身体の力が抜けてきてしまったみたいだ。
「ちょっとは緊張が解れた? そんなガチガチの身体じゃ疲れるだろ」
「あっ……」
そうか。慶太郎さんは、私の緊張を解そうとしてくれたんだ。
確かに、さっきまでの胃のムカムカ感は無くなってるし、緊張も和らいでいた。