もっと美味しい時間  

神戸に到着したのは夕方。
とは言っても6月下旬ということもあって、外はまだ明るかった。
車を駐車場に停めると、しばらくモザイク周辺を散策した。
しかし30~40分歩くと一軒のセレクトショップの前で足を止め、いきなり中へと引っ張りこまれた。

「あらぁ~慶太郎、突然どうしたのヨォ~。びっくりするじゃな~い」

って、こっちがビックリだよっ!
すごい強烈キャラが現れちゃったじゃないのっ!!
女性? それとも男性?
いやいや、どこからどう見たっておネエなのはすぐに分かる。
でも何で慶太郎さんがこの店を知っているのかが分からない。
と言うか、この目の前のおネエ様との関係が、全く浮かんでこないんだけど!

二人がじゃれあい挨拶を交している様子を、目をパチクリさせて見ていると、慶太郎さんが私の肩を後ろから掴んでズイッと前に押し出した。

「藤野百花、俺の婚約者。可愛いだろ? こいつに似合う服と靴。それからバッグも揃えてやって」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってっ!! いきなりどうしたの、慶太郎さん? それに、こちらのおネエの方とはどういう御関係で?」

いろいろ驚きすぎて“おネエ”って言っちゃったじゃない……。
恐る恐る彼女……じゃなくて彼? あぁ~、もうどっちでもいいやっ。
とにかくおネエの顔を見れば、身体を斜に腕を組み、ジロっと私を見下ろしていた。

「おネエで悪かったわねぇ!  私は慶太郎の同級生。あんたよりもズーっと付き合いが長いんだからっ、ふんっ!!」

あちゃー、怒らせちゃったみたい……。

 
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