もっと美味しい時間  

「でもまだ心配だから、俺もここにいるわ」

当たり前のようにそう言うと、部屋の隅に用意してある椅子に座って足を組んだ。

「だ、そうよ」

水華さんが呆れたように私を見る。
下着を付けているとはいえ着替えを見られているというのは、何ともこっ恥ずかしい。
とは言え、一度決めたことを絶対に覆さない慶太郎さんのことだ。何を言ったって無駄と諦め、試着を始めた。

「そうねぇ~。あんたは色が白いからどんな色も似合うけど、このバイカラーワンピースなんてどうかしら? あんたのちんちくりん体型も、これを着れば美人体型に大変身よ!」

この人は、どうして一言多いんだろう。
ちんちくりんって言葉は気に入らないけど、目の前に掛けてあるやわらげで優しげな印象を与えるベージュピンクのワンピースは、私もひと目で気に入った。
ウエストの切り替え位置が高めだから、ポッコリおなかも隠せるし脚を長く見せる効果があるのよと、水華さんが教えてくれた。
そして最後に顔を耳元に近づけると、

「それにこれ、後ろファスナーってとこがいいでしょ? 脱がしてもらいやすくてね」

男なのか女なのか分からない声で囁かれ、脳天を刺激される。
可笑しそうに笑う水華さんとは裏腹に、私は動揺を隠せなくなってしまった。

「百花、どうした?」

慶太郎さんが心配そうにこちらを見る。
水華さんが慶太郎さんに見えないように舌を出しておどけてみせると、私もまた慶太郎さんに見えないように水華さんを睨みつけた。

< 210 / 335 >

この作品をシェア

pagetop