もっと美味しい時間
「はい今度は、メイクとヘアアレンジね。ほらっ、ここに座って」
同じルーム内にある美容院みたいな一角に連れて行かれると、ケープを掛けられる。
「今日はホテルディナーだったわよねぇ、慶太郎?」
「ああ」
ホテルディナー? 誰が?
ぽけーとして鏡越しに慶太郎さんを見つめていると、水華さんに顔を後ろから挟まれ、真っ直ぐ前を向かされてしまう。
「なんて顔してんのよっ。シャキっとなさい、シャキッと」
そう言って背中を叩く力は、紛れもなく邦男だ。
メイクは自分でしていたのをベースに、目元と口元だけ手を加えてくれた。
目元には、目尻の方にだけつけまつ毛を足し、口元は今よりも少しだけ色味の濃いものを塗り、グロスを乗せた。
「ほら、ちょっと手を加えただけで、別人とまではいかなくても顔が違って見えるでしょ?」
顔を近づけて、私の鼻をつまんだ。
「イテッ」
でも、確かに……。
最近は女子力アップのために、メイク時間も惜しまないようにしているけど、まだまだだったみたい。
「本当はもっと輝かせてあげたいところだけど、今日はここまで。私が本気出したら、そんじょそこらのアイドルや女優顔負けの美人になるわよ~」
「は、はぁ……」
すっごい自信……。さすが邦男だ。
「それに、あんまり綺麗にし過ぎちゃうと、そこら辺の馬鹿な男どもが放っとかないでしょ。そしたら慶太郎がヤキモチ妬くじゃな~いっ!!」
オーホホホホホっと口に手を当てて、奇妙な大笑いをした。
「俺はそんなに余裕のない男じゃないっ!!」
「どうだか」
水華さんがニヤリと妖しげに微笑むと、慶太郎さんが顔を赤くして横を向いた。