もっと美味しい時間
その後、手早く髪をトップ、耳上、耳下の3段に分けると、それぞれをキツく捻り左サイドの耳後ろやや高めの位置にピンで留めてポニーテールを作った。
集めた毛束をほぐしながらボリュームを整えると、最後にキラキラと輝くカチューシャを飾り、あっという間に華やかな印象のヘアーが出来上がった。
「水華さん、すごいっ!」
「当たり前でしょっ! 私を誰だと思ってんのよ、このアンポンタン!」
私の頭を小突くと、慶太郎さんを呼んだ。
「慶太郎。こんな感じでどうかしら? 最高の出来だと思うけれど」
私を立たせ、慶太郎さんの前に差し出す。
いつもの自分と違う姿に恥ずかしくて少し俯き加減でいると、顎に慶太郎さんの指が当たりクイっと正面を向けさせられた。
目線が合わさり慶太郎さんの熱いまなざしに、心臓がトクンと音を立てる。
「あぁ最高だな……」
顎に会った指が頬に移動し、大きな手で包み込む。
「邦男の魔法にかかったお姫様ってとこか」
「まぁ、名文句!」
慶太郎さんの嬉しそうな顔に、水華さんのはしゃぐ姿。見ているこっちまで、テンションが上がってくるようだ。
ゆっくり振り返り、もう一度鏡に自分の姿を映してみる。
「自分じゃないみたい……」
思わず漏れた言葉を、慶太郎さんは聞き逃さなかった。
「間違いなく百花だ。もっと自信を持てよ」
「う、うん……」
「邦男、悪かったな急に」
「何言ってんのっ。慶太郎と私の仲でしょ」
パチンと手を合わすと、二人にしか分からないポーズを決めた。