もっと美味しい時間  

水華さんの店で受け取った荷物を車に置くと、今度はモザイクとは逆の方向に歩き出す。
慣れない靴でぎこちなく歩いてるからか、私のペースに合わせて歩いてくれる、慶太郎さんの気づかいが嬉しい。

こんな素敵な服を着て慶太郎さんの腕に自分の腕を絡ませて歩いていると、ちょっと自分がいい女にでもなったような気分になる。

いつもならすれ違う女性の視線を感じて『あぁ、また慶太郎さんを見てる……』なんて落ち込んだりしていたけれど、今日は何故だか男性の視線も感じた。
その慣れない視線に居たたまれなくて慶太郎さんにくっつくように歩くと、ふっと笑い声が聞こえた。

「通り過ぎる男が、みんなお前を見てくな。何か複雑な気分」

絡めていた腕を離しその手を腰にまわすと、グッと引き寄せられる。

「わぁっ!」

少しよろけそうになるのを腕でしっかりとホールドされ、密着度が高まった。

「余裕のない男じゃないなんて言ったけど、やっぱ妬ける」

「慶太郎さんにヤキモチ妬いてもらえるなんて、ちょっと嬉しいかも」

「俺だって好きな女のことだったら、ヤキモチくらい妬くさ」

「好きな女って……」

慶太郎さんの彼女になってもう随分経つけど、まだ慣れない言葉に照れてしまう。

そんな他愛のない会話をしながら、ゆっくりとした歩調で歩いていると、目の前に大きなホテルが見えてきた。
まるで浮かんでいるように海に突き出て建っているそのホテルは、私もネットなどで見る有名なホテルだ。

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