もっと美味しい時間
入り口が近くなると腰に回していた腕を外し、その腕を自分の腰に当て「ほらっ」っと腕を組めと指示した。
背筋を伸ばし緊張した面持ちで腕を絡めると、「普通でいいぞ」と笑われてしまった。
そんなこと言われたって無理っ!!
こんな素敵なホテルに、慶太郎さんと一緒に入るんだよ?
緊張せずにはいられないって言うのっ!!
それでも自分では精一杯普通に歩き出すと、慶太郎さんが一言……
「手と足が一緒に出てる」
ブブーっと吹き出して笑うもんだから、入り口にいたホテルマンたちが一斉にこっちを振り返った。
「け、慶太郎さんっ!」
「ごめん、ごめん。今からすっごい料理ご馳走してやるから許せ。なっ?」
そんな顔して、覗きこまないでよ。
その甘そうな唇に、キスしたくなっちゃうじゃない……。
まだお酒を飲んでもいないのに、私、この雰囲気に酔ってしまったみたいだ。
ホテルに入ると、まっすぐにエレベーターに向かう。
チーンと音を立てて扉が開くと、迷わず14階のボタンを押した。
エレベーターが一階ずつ上がるたびに、私の胸も高鳴る。
14階に到着すると、ホテルでの食事なんて初めての私には敷居が高そうな、高級ステーキハウスに連れて行かれた。