もっと美味しい時間
中に入ると、支配人らしき50代くらいの男性がやってきた。
「東堂様、いらっしゃいませ。先日は当店のご利用、ありがとうございました」
へぇ~。先日もご利用したんだ。それは誰と?
ちょっと疑いの目を向け、慶太郎さんを見る。
「馬鹿っ! 仕事でだよ」
呆れた声でそう言うと、私の頭を小突いた。
そうだよね~、慶太郎さんが女の人と来るなんて無いよね~。
冗談でも疑ってしまったことが恥ずかしくて舌をペロっと出し肩を窄めると、それを見た慶太郎さんが、今度は頭をぐしゃっと撫でた。
「俺には百花しかいない」
「慶太郎さん……」
今がどこにいるのかも忘れ見つめ合っていると、ゴホンっと咳払いが聞こえた。
「仲がお宜しいことで、羨ましくなります。さあ、お部屋の方にご案内いたします。こちらへどうぞ」
支配人の気の利いた言葉に二人して顔を赤くすると、少し距離を開けて、支配人に続いた。
案内された部屋の前に立つと、二人だけには広すぎる部屋が広がっていた。
戸惑いながらも一歩足を踏み入れるとそこは、静かにジャズが流れ黒を基調とした部屋からは、大人な雰囲気が漂っていた。
慶太郎さんに背を押され鉄板が備え付けられているテーブルまで行くと、目の前には見事な夜景が広がっている。思わず慶太郎さんに振り返ると、ニッコリ微笑んでくれる。