もっと美味しい時間
目の前には食前酒と色も鮮やかな前菜の三種盛り。それと、桜鯛のカルパッチョが運ばれてきた。
自然と喉が鳴ってしまう。
「ほら、食べていいぞ」
「うん。いただきますっ!!」
甘いけどさっぱりとした柚子に食前酒を飲み干すと、カルパッチョに手を付ける。ほどよく脂の乗った桜鯛に、オリーブオイルとバルサミコドレッシングの酸味がよくマッチしていて、どれだけでも食べられそうだ。
「慶太郎さん、これ最高っ!」
「だろ? でもこっちもいいんだよな」
慶太郎さんが指差す方向に、さっき鉄板に乗せられた食材がいい色に焼けてきていた。
「これってもしかして、フォアグラ?」
フォアグラを指していた指を私に向けると、「正解」と言ってそのまま私を見つめだした。
「ちょ、ちょっと。そんなに見つめられると、食べにくいんだけど……」
口を尖らせて、軽く睨みつけた。
「そんな顔するなよ。相変わらず、ウマそうに食べるなと思ってさ」
「だって本当に美味しいですから」
そう言って、料理人さんにニコッと微笑みかけた。
「ありがとうございます」
優しそうで笑顔が素敵な料理人さんだ。
料理には、その料理人の人柄が味に出ると言っても過言ではない。
どれだけ良い材料を使って素晴らしい料理を作っても、料理人の態度や対応が悪ければ、それだけで美味しさが半減してしまう。
その点だけでも、このお店はお客さんの舌を満足させているだろう。