もっと美味しい時間  

目の前には食前酒と色も鮮やかな前菜の三種盛り。それと、桜鯛のカルパッチョが運ばれてきた。
自然と喉が鳴ってしまう。

「ほら、食べていいぞ」

「うん。いただきますっ!!」

甘いけどさっぱりとした柚子に食前酒を飲み干すと、カルパッチョに手を付ける。ほどよく脂の乗った桜鯛に、オリーブオイルとバルサミコドレッシングの酸味がよくマッチしていて、どれだけでも食べられそうだ。

「慶太郎さん、これ最高っ!」

「だろ? でもこっちもいいんだよな」

慶太郎さんが指差す方向に、さっき鉄板に乗せられた食材がいい色に焼けてきていた。

「これってもしかして、フォアグラ?」

フォアグラを指していた指を私に向けると、「正解」と言ってそのまま私を見つめだした。

「ちょ、ちょっと。そんなに見つめられると、食べにくいんだけど……」

口を尖らせて、軽く睨みつけた。

「そんな顔するなよ。相変わらず、ウマそうに食べるなと思ってさ」

「だって本当に美味しいですから」

そう言って、料理人さんにニコッと微笑みかけた。

「ありがとうございます」

優しそうで笑顔が素敵な料理人さんだ。
料理には、その料理人の人柄が味に出ると言っても過言ではない。
どれだけ良い材料を使って素晴らしい料理を作っても、料理人の態度や対応が悪ければ、それだけで美味しさが半減してしまう。
その点だけでも、このお店はお客さんの舌を満足させているだろう。




< 222 / 335 >

この作品をシェア

pagetop