もっと美味しい時間  

「ご馳走様でした。とっても美味しかったです」

支配人さんにそう挨拶をすると、にっこり微笑み「また、いらしてくださいね」と渋い声で言われ、思わずニヘラとしてしまう。

「百花、顔がおかしい。支配人、今回は急だったにもかかわらず丁寧な対応、ありがとうございました。また来月の商談の時も、よろしくお願いします」

「かしこまりました。どんなことにも対応いたしますので、遠慮なくお申し付け下さいませ。本日は、ありがとうございました」

仕事モードの慶太郎さんは、嫌というほど見てきてけれど、やっぱりトップともなるとその姿は威厳が感じられた。
自分と住む世界が違うんだと、ちょっと落ち込んでしまう。
この思いばかりは、しばらく拭えそうにない。

「百花、何してるんだ。行くぞ」

ボーっとしている私を窘めると、手を引いて歩き出した。
手が触れただけで、そこからビリっと電流が流れたように身体が痺れた。
さほど飲んでもいないのに足元がおぼつかなくなってしまい、慶太郎さんに身体を預けるようにもたれかかる。

「何だよ、大して飲んでないのに酔ったのか? それとも俺に酔った?」

この口調。後者だということを分かってて言ってるよ。
あっという間に、意地悪な慶太郎のお出ましだ。
こうなった慶太郎さんは、私にはどうすることも出来ない。

それに今回に限っては、私がこうなるように仕掛けたとこがあるからね。
だってさっきから、身体が疼いてしょうがないんだもん。

慶太郎さんに抱いて欲しいって───
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