もっと美味しい時間  

「ところで、美和先輩はどうして京介のところに?」

「う~ん、会いたいから? それに、百花の引越しの手伝いもいるでしょ?」

「うん、それは助かるけど……って、まさか慶太郎さんの所に泊まるって言うんじゃないよね?」

「誰が二人のラブラブ愛の巣で、一緒に過ごすと思う? ご心配なく。京介さんのところに泊まることになってるから」

ふ~ん、京介のところに泊まるんだ。
でもそれって美和先輩と京介は、もう付き合ってるっていうことだよね?
なら、大の大人がすることを、私がいちいち口出しすることないよね?

「でも知らなかったなぁ~。いつの間に京介と付き合うことになったの、先輩?」

「うん? まだ付き合ってない」

「ぶっ!! ちょ、ちょっと、びっくりしてお茶吹いちゃったじゃないですかっ」

美和先輩が手渡してくれたミニタオルで濡れた服を拭きながら、質問を続ける。

「先輩、付き合ってないって、どういうこと?」

「言葉の通りだけど」

「なのに、お泊りしちゃうの?」

「だから、お泊りしちゃうの」

お子ちゃまには分からないだろうけど───
美和先輩はそう言うと、にっこり微笑んでから窓の外へと目線を移した。

お子ちゃまにはその辺りが、全く分かりません。
いつになったら大人になれるんだろう……。

『一生無理だろうな』

どこからか、意地悪な慶太郎さんの声が聞こえたような気がした。
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