もっと美味しい時間  

「何してんのっ? 部屋間違ってるけど!」

強い口調でそう言われ、頭の中は大パニック!!
あれ? 私、廊下を反対の方向に歩いて来ちゃったっけ?
そうかっ!  間違えちゃったんだっ!?

「すみませんでしたっ!!」

大慌てで玄関から飛び出てドアから少し離れると、壁に手をついて荒くなった呼吸を整えた。

「ふぅ~、びっくりしたぁ」

少し気持ちも落ち着いてきて小さな声でそう呟くと、ふとあることに気づく。

うん? 私、あのドアの鍵、自分で開けて中に入ったよね?
でもこれが他人の部屋なら鍵は開かないはず。

どういうこと?

どういうこともこういうこともない。
あの部屋は、間違いなく慶太郎さんの部屋だということだ。

じゃあ、さっきいた女性は誰?

心の中にじわじわと嫌な不安が広がっていき、また呼吸が乱れだす。
もしかして慶太郎さん、私に隠れて女作ってたとか?

……って、いやいや。慶太郎さんに限って、絶対にそんなことはないっ!

あっそうかっ!  きっと会社の女の子だ。
で、彼女は私のことを知らなくって、追い返しちゃったに違いない。うんうん、きっとそうだ。
もう早合点しちゃって、私のばかばか。

ちょっと気分もスッキリして姿勢を正すと、スタスタと歩きもう一度玄関の前に立つ。
さっき飛び出した後、鍵を閉めた音がしなかったから開いているだろうと、躊躇なくドアを開け中に入った。
そしてまだ玄関すぐのバスルーム前にいた女性を見つけると、彼女に向かって声を掛けた。
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