もっと美味しい時間  

「大丈夫、百花?」

「うん、なんとか……」

「よくもまぁ、こんな人が往来する道で大泣きできるもんだよね」と言いながら苦笑する美和先輩。
きっと一人だったら泣けないで、悲しくて悔しい気持ちが心の中に溜まっていって、おかしくなっていたかもしれない。
それを美和先輩がずっとずっと背中をさすり、声をかけ続けてくれたから、その苦しい思いを全部泣くと言う行為で吐き出すことができた。

「ありがとね、先輩」

「ねぇ百花。その先輩って言うの、止めない? もう私はあんたの先輩じゃないんだし」

「それはそうだけど……」

「美和でいいよ」

「いやいや、それは勘弁して欲しいというか、慣れないっていうか……」

「じゃあ百花が決めて」

って、そんな簡単に言われてもなぁ。一歳しか違わないけど、先輩は先輩で私な全く及ばない素敵な人だしなぁ……。
やっぱりここは、敬うべきだよね?

「美和さん? って言うのはどう?」

「堅い。もっと親しみを込めて」

「美和ちゃんとか?」

「……うん、それいいね」

マジですか? 友達じゃないんだし、ちゃんでいいんですか?
でも何だか、今まで以上に仲良くやっていけるような気がしてきたよ。

「美和ちゃん?」

「何で疑問形か分かんないけど、いいんじゃない? ちょっとは元気出た?」

「あっ……」

ホントだ。さっきまでの重たい気分が、今は薄れていっている。
さすがは美和先輩……じゃなかった、美和ちゃん!

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