もっと美味しい時間  

「話しがある。中に入って」

最初見た時よりは幾分和らいだ顔になっているけど、まだ何か不満そう。
不満はこっちだって言うのっ!!
でもここは至って普通に慶太郎さんの前を通り抜けて、部屋へと入った。
パンプスを脱ぐため目線を下げると、さっきは気づかなかった女性物の靴が目に入り落ち込む。

自分の目で女性を見て会話までしたのに、今更落ち込んでもねぇ……。

諦めにも似た笑いを漏らし、美和ちゃんと一緒にリビングへと足を踏み入れた。
そこにはソファーに面白くなさそうに座っているさっきの女性と、キッチンのカウンターでコーヒーを飲んでいる京介がいた。

「美和さんはこっちに来て。百花はそっち」

そう言って指差すのは、当然女性がいるソファー。
だよね……。
縋るような目で美和ちゃんを見ても、苦笑して首を横に振るだけ。
はぁ……。ここは一人で頑張るしかなさそうだ。

京介に言われた場所に座ると、目の前に座っている女性と目が合う。思わずニコッとしてしまうと、フンッとそっぽを向かれてしまった。

なんか気分悪い……。

「慶太郎、さっさと始めろよ。時間の無駄だ」

京介のその言葉で、部屋に緊張が走る。
嫌だな、この雰囲気。綾乃さんの時のことを思い出す。
俯き唇を噛むと、慶太郎さんが私の隣に座り話しだした。

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