もっと美味しい時間
「なぁ百花、顔を上げろ。お前、何か勘違いしてるだろ?」
はぁ!? この期に及んで、私の勘違いで丸く収めようとしてるわけ?
あり得ない……。
今日という今日は、堪忍袋の緒が切れたっ!!
「勘違いのはずないじゃんっ!! だって私は、この目でちゃんと見たんだから。この人が慶太郎って名前を呼んで、バスルームに入っていくのを……」
目の前の女性を指さし大声で叫ぶと、その時の光景が目に映り、キツく目を瞑った。
苦しくなるだけだから思い出したくないのに、鮮明に思い出されて涙が出そうになる。
「お前、バスルームって言うけど、コイツが服を脱いで中まで入ってきたのをちゃんと見たのか?」
「そこまでは見てないけど……。でもあの雰囲気は絶対に入ってるでしょっ! って言うか、慶太郎さんが言ったんじゃない、『昔みたいに一緒に入るか?』って!!」
「あ、あれはだなぁ……」
そんな風に困った顔して頭掻いたって、無駄なんだからっ。
何かうまい言い訳があるんなら、聞こうじゃないの!
腕を組みソファーにふんぞり返って座ると、カウンターにいた京介が辛抱たまらんっと言った感じで、盛大に笑い出す。
「慶太郎、そんなこと言ったんだ。笑える。まぁ百花が勘違いしたのも無理ないな。どうせ明日香も、適当に言葉合わせて応えたんだろ?」
京介まで、私が勘違いしたって言うの?
って、この人の名前、明日香って言うんだ。あれ? どっかで聞いたことあるような……。