もっと美味しい時間
「百花、あれは悪かった。お前がいるって知らなかったし、妹に向かってのちょっとした冗談だったんだよ」
「ほら、本音が出た! 私がいないから一緒に入ろうと思った……って、今、妹って言った?」
「ああ、コイツは俺の妹の明日香。今日仕事から帰って来たら、エントランスで待ってたんだよ」
明日香……。
そっかっ! 挨拶に行った時に、お義母さんが言ってたんだ。東京に娘がいるって。
「そうだったんだ。良かったぁ~。もう私、慶太郎さんに捨てられちゃうんだと思ってたよ」
「捨てるかっ。やっと今日から一緒に暮らせるって言うのに」
肩を抱いていた手を腰に落とすと私を抱き寄せ、頬にキスをした。
みんなの前で、恥ずかしい……。
でも本当のことが分かっって嬉しい反面、何で妹さんが慶太郎さんの恋人みたいな素振りを見せたのかが疑問として残っちゃったよ。
そんなことする必要性、ある?
なんだろう、こう胸がザワザワするような感覚。
どこからか強い視線を感じて目を動かせば、敵意むき出しの明日香さんの目線とぶつかった。
最初にあった時もそうだった。
私のことを嫌ってる?
そんな風にも取れる冷たい視線が何を訴えかけているのか、私には全く分からなかった。