もっと美味しい時間  

夜になると綾乃さんも来て、食事会が始まった。
京介と美和ちゃんが買ってきてくれたデパ地下食材に、私が冷蔵庫の中に残っていたもので作った何品かのおつまみ、それに綾乃さんが持ってきてくれた美味しそうなパンが、テーブルの上にところ狭しと並べられている。

「それにしても、今回の百花の早合点には参ったっ」

「もう美和ちゃん。何回も同じ事言わないでよっ!」

「でも百花らしいと言えば、百花らしいんじゃないか?」

「京介まで……。慶太郎さん、何か言ってよ」

「俺が言える立場かよ。元はといえば、俺の冗談でお前を勘違いさせたんだからな」

いつになくしゅんとしている慶太郎さんの隣に座り、カラになっていたグラスに赤ワインを注ぐ。
そして自分の持っていたグラスと合わせると、チンッと透き通った音が部屋に響いた。

「慶太郎さんは悪くないから。私がもっと冷静になって考えれば、分かることだったのに……。ごめんね」

慶太郎さんを見つめそう謝ると、窓際で一人立って飲んでいた明日香さんが、嫌味とも取れる言葉を言い放つ。

「ほんと、バカなのかお人好しなのか。そんなんで、お兄ちゃんの妻になれるわけ?」

「そ、それは……」

痛いところを突かれて、言葉が出ない。

「明日香っ!  お前それは、ちょっと言い過ぎだぞ」

「そうかなぁ。ねぇ綾乃さん、どうしてお兄ちゃんと別れちゃったの? 私、今回のお兄ちゃんの結婚の話をお母さんから聞いた時、てっきり綾乃さんのことだとばかり思ってて。凄く嬉しかったのになぁ~、綺麗なお姉さんができるの」

グサッ!! 胸の奥の方までナイフが突き刺さったみたいに、心が痛いんですけど……。

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