もっと美味しい時間  

「明日香ちゃん……。そう言ってくれるのは有り難いんだけど、もう終わったことだから」

綾乃さんも明日香さんの言葉には困ってるみたいで、慶太郎さんを見て苦笑した。

「おい明日香。どうしたって言うんだよ?」

「お兄ちゃんは黙っててっ!! 綾乃さん、今からでも遅くないよっ。もう一度よりを戻して、ねっ、お願い!!」

「そ。それはちょっと……」

そう綾乃さんにお願いする様は凄まじいものがあって、当の綾乃さんもタジタジだ。
でも明日香さん、そんなにまでして私と慶太郎さんを結婚させたくないなんて……。

かなりショックかも───

目の前には美味しそうな食べ物がいっぱいあるっていうのに、胸が苦しくなってきて食べられそうにない。
手に持っていたフォークをお皿の上に置くと、居た堪れなくなって席を立つ。

「ちょ、ちょっとトイレに行ってきまーすっ!」

できるだけ明るい声でそう宣言すると、誰にも顔を見られないようにリビングを出た。

「百花っ!!」

慶太郎さんの私を呼ぶ声に一瞬足が止まりそうになったけれど、その気持ちに反するようにトイレへと駆け込んだ。



 
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