もっと美味しい時間  

と言って走りだしたものの……。
明日香さんが部屋を飛び出してから、結構時間経っちゃってるんだよね。
エントランス前の階段を降りたところで、足が止まってしまう。

コンビニのある大通りの方に向かったか? それとも夜景の見える高台?
でも何故か、明日香さんはそんな遠くに行っていないような気がしていた。

近くで誰かが迎えに来てくれるのを待っているような───

そして目を向けたのが、真ん前の公園。
昼間は大勢の人で賑わう憩いの場も、夜ともなれば静かで時折風に吹かれて木々の揺れている音が聞こえるだけだった。

私も以前、ここへ逃げ込んだ。
慶太郎さんと綾乃さんの関係を知って、その場にいられなくなって……。

あの時は、京介が来てくれたっけ。
最初は、何で慶太郎さんが来ないのよっ!  なんて思ったけど、あそこに慶太郎さんが来ていたら、きっと上手くいってなかったと思う。

京介だったから素直な気持ちを、素直な自分をさらけ出すことが出来て、その後本当の自分で慶太郎さんと話すことが出来たんだ。

だったら今、明日香さんのところへ言って、彼女の本当の気持ちを聞くのは私の役目。
きつい言葉を投げつけられるのは、覚悟の上。
何を言われたって挫けたりしない、たぶん……。

手に握りこぶしを握ると、公園内へと向かって歩き出す。
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