もっと美味しい時間  

「ちょっと慶太郎さんっ、離してっ!!」

「何で?」

「何でって……。そんな子供みたいなこと言ってないで、動きにくいから離して下さいっ」

なんて言ったって、離してくれるはず無いんだけど。一応、言ってみないとね。

「じゃあ動かなけりゃいいじゃん」

でしょ……。
ああ言えばこう言う。これ、慶太郎さんお得意の手法。
いつも言う通り、こうなった慶太郎さんは、もうどうすることもできない。

だったらしばらく、このままで───

冷蔵庫を覗き込んでいた体勢をもとに戻すと、お腹の前で組まれている慶太郎さんの腕に、手を添えた。

「やっと素直になった」

その勝ち誇った態度はやっぱり気に入らないけれど、抱きしめられるのは悪くない。それに、新婚夫婦になったみたいで、ちょっとこそばい感じ?
慶太郎さんに体重を掛けるようにもたれかかって甘えてみせると、戒めをキツくされた。

「何? もうしたくなったとか?」

「そ、それは慶太郎さんの方でしょ!? 私はただ嬉しくて、ちょっと甘えたくなったと言うか……。その、あの……あれは、夜のお楽しみってことで」

……って、私のバカバカ! 何言っちゃってるんだろう。
これじゃあやっぱりエッチしたいって、認めちゃってるようなもんじゃないのっ!!

「言ったな? 百花から言ったんだから、ちゃんと覚えておけよ?」

そう言って盛大に笑うと、私をクルッと反転させた。

「そういえば、バイト決まったって若月から聞いたけど、どこでだよ?」

    









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