もっと美味しい時間
「な~んてっ! あはは~、もう慶太郎さんったらそんな顔しちゃって、怖いなぁ~」
ゆっくり離れようとそろそろ後ずさりすると、背中が冷蔵庫にぶつかった。
慶太郎さんはジリジリと顔を近づけてくるし……。
万事休すっ!!
目をギュっと固く瞑ると、近づいてくる気配が止まった。しばらくしてフッと鼻で笑う音が聞こえると、両頬を摘まれてしまう。
驚いて目を開くと真ん前に、さっきまでとは違う慶太郎さんのドアップ顔。その顔は、優しさと愛おしさを含んでいて、見つめられるだけで蕩けてしまいそうだ。
「な、何?」
このまま見つめ合っていたら、身体がおかしくなってしまいそうで目を伏せてそう言うと、頬を摘んでいる指の力が強められた。
「痛いっ!!」
「百花もいっちょまえの口叩くようになったよな。でもまだまだ、俺には敵わない。これからは毎日一緒だし、夜のお仕置き楽しみにしてろよ」
何ですかっ!? お仕置きお仕置きってよく言うけれど、ほぼ毎日お仕置きみたいなもんじゃない。
毎日仕事であっちこっちに出向いて忙しそうにしてるのに、どこにそんな体力残ってるの? と思うくらいの元気の良さ。六歳も若い私の方が、ついていけそうにないよ……。
恨めしい目をして慶太郎さんと目を合わせると、摘んでいた指を離し頬を撫でる。
「夜まで待てないな」
「それは無理っ!」
慌てて身体を離しリビングへ逃げると、ソファーの隅に丸まった。